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「ボランティア」とは何か?
実践・行動できる子どもを育てるための授業


 ボランティアとは何か?
  千葉大学の明石要一氏の言葉を借りる。(「教育技術研究 No.6 21世紀が求
 める『学力像』」日本教育技術学会編,明治図書)
  ボランティア活動を次の四つ面からとらえる

1 活動が人のためになっている(公共性)                  
2 自分から進んでしたもの(自発性)                    
3 利益を予測しない(無償性)                       
4 繰り返しがある(継続性)                        

  以上のように,ボランティア活動は「人のためにする」活動であり,それは「自分か
 ら進んで行う」ことに力点が置かれる活動である。
  ボランティア活動は人から勧められてするものでもなければ,人から強要されたり,
 することを余儀なくされたりするものでもない。あくまで,「自分から進んで行う」も
 のがボランティア活動なのである。
  動機が「自発的・自主的」でなければ,ボランティアではない。それは「奉仕」であ
 る。そういった意味では,ボランティア活動と奉仕活動とは同義ではない。
  研究社の英和辞典で「Volunteer」は次のように説明されている。





1 志願者,有志,ボランティア;志願兵,義勇兵              
 2(略)                                 




他 …を自発的に申し出る。進んで…提供する。               
 自 進んで事に当たる。志願する;徴兵に応募する。             

  また,岩波の国語辞典では次のように説明されている。

@ 自分から進んで社会事業などに奉仕する人                 

  どれも「自分から進んで」という文言がついている。つまり,ボランティアとは,行
 う内容は「人のためにするもの」であるが,行う人の動機は「自発的・自主的」でなけ
 ればならないのである。
  では,「ボランティア学習」とはどのような学習のこというだろう。次のように考え

                                      
                                      

  とりあえず,「ボランティア学習」をこのように定義づける。
  このために何をすればいいのか,どのような学習活動があるのか,これを考えていけ
 ばいいのである。
  上の定義を核にして,どのような学習活動が必要になってくるのか述べていく。
  まずこれである。

 「人に役立つ」具体的な内容や方法・技術を知らせること           

  次にこれである。

 「人に役立つ」具体的な方法や技術を練習し,習得させること         

  さらに次のことである。

 習得した「人に役立つ」具体的な方法や技術を,日常生活や社会に働きかけ,生か
す場をつくること                              

  以上を図にしてみる。





 「人のために何かしたい」「人に役立つことをしたい」という自発性や自主性
を育てたり,促したりする                        



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

1 「人に役立つことをしたい」という自発性を促す個別な情報を与える。
  (ボランティアの意味を知らせる。)               
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2 「人に役立つ」具体的な内容や方法・技術を知らせる。       
3 「人に役立つ」具体的な方法や技術を練習し,習得させる      
4 習得した「人に役立つ」具体的な方法や技術を日常生活や社会に働きか
 け,生かす場をつくる                       

  上の1〜4のどれもが「自発性や自主性」を育てるため・促すために行われるのであ
 る。
  今までの「ボランティア」というと,その多くが「4」だけではなかっただろうか。
 言うなればただ「活動」があっただけである。活動主義である。(もちろん,事前指導
 や関連した指導はあっただろうが…。)
  仮に活動することの意味は伝えられたとしても,活動を「積極的にしよう」「自分か
 ら進んでしよう」という自発性・自主性を育てる部分の指導が弱かったのではないか。
  「ボランティア学習」の場合は,まさにこの「自分から進んで,人に役立つことをし
 たい」という自発性・自主性を育てることを中核とするのである。このために,どうす
 るか,どのような学習をさせるかなのである。
  ここで,「ボランティア学習」が「ライフスキル学習」とつながってくる。
  「ライフスキル学習」と何か。次のような学習である。

 「人間として生きるために必要な技術」「『有効で積極的で適応的な』行動の技術
」を学ぶ学習                                

  以上のような「ライフスキル」を学ぶ学習なのである。この「ライフスキル」は次の
 三つに大別される。

1 生活のライフスキル(毎日の生活を健康で有意義に生きる技能)       
2 生命のライフスキル(生命の安全を図り,自他の生活を尊重して生きる技能) 
3 人生のライフスキル(自己の人生に生きがいを持って,自己実現を図る技能) 

  このような技能の習得を目ざして行われるのである。
  「技能の習得」までできて,初めて日常場面に生かすことができるのである。習得を
 目ざす技能は,上の三つである。
  「ボランティア学習」の場合どうなるのか。次のようになる。

 ボランティアに関する知識や情報を,行動に結びつくようにする。       

  このような学習を創り上げるのである。
  もっと言うと,

1 ボランティアに関する「知識や技能」を知らせる。             
             →                        
2 ボランティアに関する「態度」が形成される。               
             →                        
3 ボランティアに関する「技能を練習し,習得」させる。           
             →                        
4 ボランティアに関する「行動・実践が可能」となる。            

  このようなサイクルの学習を創り上げ,ボランティアする・できる技能を習得させる
 のである。しかし,目ざすは「人に役立つことをしたい」「人のために何かをしたい」
 という自発性・自主性の育成である。
  今まで述べたきたことをまとめてみよう。

1 目標                                  




 「人に役立つことをしたい」という自発性や自主性を育て,実践・行動する子
どもを育てる。                             



2 指導内容と方法                             








@ 「人に役立つことをしたい」という自発性を促す個別な情報を与える。  
  (ボランティアの意味を知らせる。)                 
A 「人に役立つ」具体的な内容や方法・技術を知らせる。         
B 「人に役立つ」具体的な方法や技術を練習し,習得させる        
C 習得した「人に役立つ」具体的な方法や技術を日常生活や社会に働きか  
 け,生かす場をつくる                         







3 指導方法                                



 ライフスキル学習〜身に付けた知識が行動に結びつくように〜       


 ◇ 「ボランティア学習」は,三つの「ライフスキル」のどれにもまたがるもので
  ある。                                 
 
 
 

生命のライフスキル(生命の安全を図り,自他の生活を尊重して生きる技能)


  * 「自他の生活を尊重して生きる技能」に当たる。            
 
 
 

生活のライフスキル(毎日の生活を健康で有意義に生きる技能)      


  * 「毎日の生活を有意義に生きる技能」に当たる。            
 
 
 

人生のライフスキル(自己の人生に生きがいを持って,自己実現を図る技能)


  * 「自己の人生に生きがいを持って,自己実現を図る技能」に当たる。   
    「人に役立つことすること・できること」が自分の生きがいにつながる。 
                                      
 ◇ 「ボランティア学習」によって得られた「人に役立つことしたい」「人に役立
  つことをする」というその態度や行為は,次のような価値を産み出す。    
 
 
 
 
 
 
 
 
 

1 自他と共に尊重される生活の実現                  
   →「人に役立つ」行為をする関わり方において           
2 個人の毎日の生活の充足感                     
   →「人に役立っている」という認識の仕方において         
3 人生に生きがいができる                      
   →「人に役立つ」行為そのものが生きがいになっているという認識に仕
    方において                          








   このように,ボランティアは,自他ともにひいては社会全体に幸福をもたらす
  ことのできるものである。